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2019年度 競輪とオートレースの補助事業

補助事業番号  2019M-136
補助事業名    2019年度 細径ポリマーチューブの微細加工装置の開発 補助事業
補助事業者名  山口大学 大学院創成科学研究科 機械工学系専攻 微小生体機械学研究室 南 和幸

1 研究の概要
 本事業では、本申請者が半導体微細加工技術を応用して開発した円筒面反応性イオンエッチング装置を細径チューブに適用するための加工装置の開発を行った。円筒面反応性イオンエッチング装置による加工は、ポリマーチューブの外周に高周波プラズマを発生させ、プラズマ内で生成された活性種とチューブ材料との化学反応を起こさせて、チューブ材料を化学的に分解・除去する方法である。装置の改造、プロセス技術の開発により、外径2.2mmポリマーチューブの外周面のの微細穴あけ加工において、加工精度を向上させることが出来た。

2 研究の目的と背景
 本研究の目的は、円筒面反応性イオンエッチング技術の細径チューブの微細加工への適用に当たり、細径化・微細化に対応するために高性能化した円筒面反応性イオンエッチング装置を開発することである。またこの装置の利用に付随した加工プロセス技術の開発も行い、外径2mm程度のポリマーチューブへの微細穴開け加工において、加工幅誤差および長さ方向の加工深さ誤差をこれまでよりも減少させた加工技術を実現する。
 工業分野だけでなく医療分野でも、細径の金属チューブやポリマーチューブの側面に微細穴を空けた部品・器具が求められている。中でもチューブ側面に一列に穴をあける要望があるが、レーザ加工ではチューブ内にバリが発生する、穴の貫通後反対側の内側面にレーザが当たり不要な加工がされてしまう問題がある。金属チューブに関しては微細電界放電加工によりこの問題を解決しているが、ポリマーチューブに関しては有効な加工方法が無い状況にある。

3 研究内容
(1)細径ポリマーチューブの微細加工装置の開発
①円筒面反応性イオンエッチング装置の開発
 加工精度向上のため、真空排気能率を向上させるとともに、電極の形状・寸法・配置を変更する改造を行い、プラズマを発生させる領域の最適化を図った。

円筒面反応性イオンエッチング装置構成図 電極部配置写真

②粘着剤スプレー装置とマスク貼付装置の開発
 粘着剤スプレー装置を開発し、外径2.2mmのポリマーチューブの外周に、厚さ3µmの粘着剤の塗布が可能となった。また、厚さ1µmのマスクを外径2.2mmのポリマーチューブの外周に貼り付ける装置の開発を行った。

粘着剤スプレー装置 マスク貼付装置

③微細加工特性評価結果
 開発した装置を用いてエッチング特性を評価した所、大幅な加工精度の改善が得られた。

ポリマーチューブの溝加工断面写真 エッチング特性の改善

4 本研究が実社会にどう活かされるかー展望
 本研究成果により細径ポリマーチューブの微細加工が実現できれば、素材・器具メーカーにおいてポリマーチューブの微細加工に応用され、市場の要求に応えた高機能ポリマーチューブの供給を実現できる。例えば医療分野では、心筋梗塞の治療に用いられるカテーテルやステントなど、細径のポリマーチューブを加工した器具が多く使われており、これらの器具の高機能化のために、チューブ側面に開口を設けるなどの微細な加工を施すことが要求されている。また、高齢化社会の遠隔診療・在宅医療においても、検査・治療や栄養補給のために多種の薬液とそれを供給する細径のポリマーチューブの高機能化が望まれている。したがって、上記のような高機能な器具の実現に貢献でき、生活の質が高い高齢化社会への発展に貢献できる。さらに医療機器メーカーにおいては、高機能ポリマーチューブの採用によりこれまでにない高機能な医療・介護器具の開発・生産が活発になることが期待できる。つまり、医療そのものだけでは無く、医療を支える産業の活性化への貢献も期待できる。


山口大学大学院創成科学研究科(工学系学域)機械工学分野 微小生体機械学研究室
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